腱板断裂
更新日時:2024/08/27
腱板断裂とは?
肩関節には「腱板(けんばん)」と呼ばれる肩関節を安定させる上で重要な筋肉が4つ存在します。腕を上げたり、ひねったりする運動の時に重要な働きをしていますが、これらの筋肉が断裂することで発症する疾患です。
40歳以上の男性(男62%、女38%)、右肩に好発します。
年齢とともに有病率が増加していき、80 歳台は約 1/3 に腱板断裂が存在していること、そして断裂の 2/3 は無症状ということであると報告されています。
腱板断裂は、肩の運動障害・運動痛・夜間痛といった症状を生じます。運動痛はありますが、多くの患者さんは肩の挙上は可能です。
五十肩と違うところは、拘縮、すなわち関節の動きが固くなることが少ないことです。
腱板断裂の症状
☑ バンザイやひねる動作が痛い
☑ 痛みで寝れない
☑ 腕を上下する際にひっかかりを感じる
腱板断裂の原因
腱板断裂の背景には、腱板が骨と骨(肩峰と上腕骨頭)にはさまれているという解剖学的関係と、腱板の老化があると言われています。
はっきりとした原因がなく、日常生活動作の中で、断裂が起きます。
スポーツなどで肩から転落するなどの怪我で発症することもあります。
腱板断裂の検査
超音波検査(エコー検査)やMRI検査が行われますが、無症状の腱板断裂もあるため画像検査だけでは不十分です。
受傷のきっかけを聴取するなど問診を丁寧に行い、社会・スポーツ歴・年齢・性別・既往歴などを把握することも重要であり、そのうえで 徒手検査を行うことが必要不可欠です。
当院では、超音波検査(エコー検査)と丁寧な問診、そして各種徒手検査を用いてより精度の高い評価を行います。
腱板断裂の治療法
□リハビリテーション
〈急性期〉
安静時や夜間に痛みがあるなど、炎症の強い時期には、患部を氷で冷やす(アイシング)や電気治療、痛みによって生じている過剰な筋肉の緊張をほぐすことなどが有用です。また、寝ている際に痛みが生じている方には、下図のようにタオルや毛布を用いて肩が楽な姿勢で寝れるようにします。
図:就寝時の痛みに対するポジショニング (引用:腱板断裂の保存療法.村木.関節外科 Vol.41 No.11.2022)
〈機能回復期〉
安静時や夜間の痛みが軽減または消失し、動作時の痛みが主な症状に変化してきたら肩関節・肩関節周囲の機能回復を図ります。
具体的には、肩関節の運動を阻害している筋のストレッチングや、肩関節の運動を正常化するようインナーマッスルなどの強化を行います。その他、肩甲骨や頚、骨盤などとの協調性を改善するように全体的に機能回復を図ります。
簡単!四十肩体操①肩まわし
※必ずしも全員に効果を保証するものではありません。痛みのないようにお試しください。
簡単!四十肩体操①胸ストレッチ
※必ずしも全員に効果を保証するものではありません。痛みのないようにお試しください。
□薬物療法
病院では、痛みのコントロールのために、痛み止めの内服やステロイド注射・ヒアルロン酸注射などが行われることがあります。
痛みをコントロールすることが主な目的のため、リハビリテーションを併用することが重要です。
□手術療法
保存的な治療を行っても症状の改善が乏しい場合には、手術療法の適応です。
参考・引用文献一覧
2)腱板断裂の疫学と診断.米田ら.関節外科 Vol.41 No.11.2022
3)腱板断裂の保存療法.村木.関節外科 Vol.41 No.11.2022
執筆者 小山 晴樹
こやま整骨院・整体院 院長 (長野市南長池761-5)
柔道整復師免許を取得後、長野県長野市内のスポーツ整形外科にて診療補助・リハビリテーション業務に従事。オリンピック選手やプロ野球・プロサッカー選手などのリハビリテーションにも携わる。また、施設管理主任・部長として、施設運営のみならず講演会や研修会を企画運営した。
現在は、長野市南長池にて「こやま整骨院・整体院」の院長として臨床に携わる。